——レティアの効率的な狩り
「うさぎだと、何匹必要かなぁ?」
レティアはニコッと笑顔を浮かべながらルーシーに尋ねた。その無邪気な表情に、ルーシーは一瞬考え込んだ後、答えた。 「そーねー、1匹でも良いけど、2匹あった方が満足感があるわよね……パンもないし。料理といっても焼くだけだし。一応、塩はポーチに入っているし。」ルーシーの腰にあるベルトには、小さなポーチが種類ごとに付いていて、それが非常に実用的でかっこよく見えたレティアは、その姿に感心していた。
「二匹ね、えいっ!」
レティアは指先を軽く動かすと、掌にビー玉ほどの虹色の光が瞬時に凝縮された。それは微かに脈打ち、まるで生きているかのように輝きを放っている。その光の球体は、レティアの意図を吸い込むように、草むらの奥に潜むうさぎの気配へと向けて、ふわりと弧を描くように放たれた。虹色の軌跡が短く空を横切り、音もなく草むらに吸い込まれていく。 そして、仕留めた獲物を回収するために軽やかに歩いていく。「ちょ……え? そんなに簡単に仕留められるものなの? そのうさぎ、草むらに隠れていたわよね? どうやって見つけたのよ? あぁ……いいわ。レティーだしね……。」
ルーシーは驚いた様子で目を見開き、少し呆れたようにため息をつきながら、立ち上がった。そして手際よくニコッと微笑みながら解体を始めた。「えっと……そんな高度な魔法を使えるなら、水くらい出せるわよね? お願いね! 肉を洗うのに必要なのよ。」
ルーシーは作業を進めながら、自然にレティアに頼んできた。「水かぁ……うさぎを洗うなら洗い桶が必要だよね……」
レティアは少し考え込んだ後、地面が濡れるのを防ぎ、焚き火を消さないための解決策を思いついた。虹色の能力を使い、洗い桶をイメージし、色をつけて可視化させた。虹色のままだとノクスやシャドウパピーズも見えないことに気づいたからだった。完成した洗い桶をルーシーの隣に運び、魔法でジャバーっと水を注ぎ込む。
「……この桶、どーしたのよ? 持っていなかった……ううん。……なんでもないわ。」 ルーシーは訝しげな表情でレティアを見つめたが、すぐに解体作業に戻った。その姿を見て、レティアは心の中で感嘆する。 『ルーシーは冒険慣れしてるなぁ……カッコいいっ♪』 ——ルーシーの自己評価とレティアの才能解体が終わり、味付けをして肉を焚き火で焼き始めた頃、ルーシーがふと質問を投げかけてきた。
「レティーって、冒険者の何を目指しているのよ? テイマーなの? 魔術師?」 焚き火をじっと見つめながら、静かな声で尋ねた。「え? わかんなーい。魔法は使えるよ! 小さい時から使えてたんだってー。テイマーはしらなーい。」
レティアはあっけらかんと答えたが、その声にはどこか楽しげな響きがあった。剣も弓矢も使えるようになったことに触れたかったが、自分でもその特性を最近知ったばかりだったため、深く考えることはしなかった。「そ、そうなの……それ、すごい才能ね……。」
ルーシーはその言葉に一瞬驚きの表情を浮かべつつ、自分のことを語り始めた。 「わたし、剣術を少しと……アーチャーなのよ。あまり需要ないのよね……戦闘となると中距離戦だし、待ち伏せなら得意なんだけどね。でも話を聞いていると、ほとんど……食料補給係よね……。」 そう言いながら、少し自嘲気味に肩をすくめた。しかし、その後、わずかに微笑んで付け加えた。 「剣術が使えるのが、せめての救いかな。」ルーシーの目には、レティアへのわずかな羨望が滲んでいたが、それでも彼女はその気持ちを隠そうと、再び焚き火へ視線を戻していった。
ルーシーの腰には、古びたショートソードが見えていた。それは剣士が使うような大剣ではなく、実用性重視のコンパクトなショートソードだった。その風合いから、ルーシーにとって思い入れのある剣なのだろうと察したレティアは、それ以上触れることはせず静かにその存在を見守っていた。
——深まる絆と微笑ましい誤解「ルーシーもいろいろと、できるんだねー。」
レティアは笑顔を浮かべながらルーシーに寄りかかる。その様子に、ルーシーは一瞬目を細めたが、すぐに強い口調で返した。 「……あんたほどじゃないけどね!」 その言葉には軽いツンケンした調子が含まれていたが、レティアは好意の感情を感じ取ったため、微笑みながら気にする様子は全くなかった。「えへへ。ルーシーと一緒にいると、たのしーね♪」
レティアは澄んだ目でルーシーを見つめ返し、素直な言葉を伝えた。すると、ルーシーは顔を逸らしながら恥ずかしそうに反論する。 「……ば、ばかぁ……あんたを楽しませるためにいるんじゃないわよ。レティーが……どうしてもって言うから、付き合ってあげてるだけよ!」その返答に、レティアは嬉しそうに声を弾ませた。「うん。明日も一緒だね?」
その問いかけに、ルーシーは少し戸惑いながらも、静かに答えた。 「そ、そうね……レティーは普段なにをしているのよ?」「わたし? えっと……ぼうけん! 冒険してるぅー♪」
自信満々の声で答えるレティアに、ルーシーは思わず目を丸くした。 「そ、そうなの? どんなところに行ってるの?」「ん……家の周りとか! たまーに……この森に来てたぁ。でも……怒られちゃうんだよね……えへへ。」
レティアは少し照れながら答えた。その無邪気さに、ルーシーは気まずそうに視線を逸らす。 「あ、そうなんだ……そういう冒険ね。びっくりした……驚かさないでよね……」ルーシーはレティアの明るさにほんのり癒されながら、少し安心したような表情を浮かべた。それぞれの性格が対照的ながらも心地よく溶け合う瞬間だった。
彼は慎重にレティアの反応を見ながら言葉を選び、丁寧に提案を述べた。「レティア様の負担にならなければ……数頭を残していただいて……収納していただきギルドで食材として買い取りをいたしますけれど……どうでしょうか?」 その言葉には、ジェレミーの優しさと気遣いが込められていた。レティアの機嫌を損なわないよう、彼の言葉はあくまで控えめで慎重だった。 レティアはジェレミーの提案に耳を傾けながら、再び自分が狩った獲物の山を眺めた。そして少しだけ困ったような表情を見せつつ、可愛らしく笑って誤魔化すように答えた。「うん。ちょっと……獲りすぎちゃったねぇ。えへっ♡」 その反応にジェレミーは少し安心したようで、肩の力を抜きながらうっすらと微笑みを浮かべた。一方で、フィオとルーシーもこの光景に少し呆れたように見つめていたが、レティアの無邪気な笑顔に免じて何も言わず静かに見守っていた。♢大量の獲物とギルドの騒ぎ 翌日、レティアは大量の獲物をバッグに詰めてギルドに向かった。ギルドの扉をくぐると、その異様な重さに周りの冒険者たちが好奇の目を向ける。そして、そのバッグからシカ、ウサギ、さらには森でしか見られない珍しい獲物までが次々と引き出される光景に、ギルド職員や冒険者たちがざわつき始める。彼らの間には、驚きの声が響き渡る。「……あの、これは全部一人で仕留めたんですか?」 ギルド職員の一人が目を見開きながらレティアに尋ねた。彼の声は、驚きでわずかに上ずっていた。 レティアはニコニコ笑顔で答える。その笑顔は、何の悪気も感じさせない。「うん♪ みんなでお昼に食べようと思ってたんだけど、さすがに多すぎちゃったから持ってきたの! ギルドで使ってねぇ♡」 その無邪気な声にギルド職員はさらに困惑しながらも感心していた。周囲の冒険者たちはその規格外の活躍に驚きながらも、彼女の能力を改めて認めざるを得ない状況だった。♢料理コンテストの開催
ジェレミーは驚きと感心が入り混じった声を漏らした。彼の表情には、畏敬の念が浮かんでいる。「これほどの魔物を……まるで子犬を追い払うように討伐するとは……。」 フィオも目を見開きながら笑みを浮かべ、少し皮肉を込めて言った。彼女の声には、諦めにも似た感情がにじんでいる。「やっぱり……わたしたちが駆けつけても、わたしたちが邪魔になっちゃいますねー。」 ルーシーは剣を収めながら一息つき、ホッとした顔で呟いた。彼女の肩の力が抜け、安堵の息を漏らす。「ちょっと、あんたねぇ……わたし達の獲物を横取りしないでよね!」 その言葉には若干の不満を含みつつも、心のどこかで助かった安堵感が滲み出ていた。 一方、フィオはルーシーの言葉に対して優しい笑みを浮かべ、そっとレティアの耳元で囁いた。彼女の指先が、レティアの髪を優しくなでる。「そんなに、機嫌を悪くしないで……レティーちゃん。ほんとはね……すごく助かったんだよ。ルーシーの顔を見ればわかるでしょ。ウフフ♪ ありがとね。」 その言葉に、レティアは少し顔を上げたものの、どこかしょんぼりした様子を見せていた。彼女の瞳は、まだ潤んでいるように見える。♢「じゃま!」の一言とレティアの拗ね レティアは影から現れる際に、ルーシーが安堵している様子を感じ取っていた。しかし、戦闘中に放たれた「じゃま!」という言葉にショックを受けていたのだ。その言葉が、彼女の心に深く刺さった。 彼女は座り込み、わざと俯きながら大きな瞳を潤ませてルーシーを見上げる。その瞳には、今にもこぼれ落ちそうな涙が浮かんでいた。「ルーシーに『じゃま!』って言われたぁ……。」 その姿はまるで小さな子どもが拗ねているかのようで、愛らしさが漂っていた。 そんなレティアに可愛らしく訴えられたルーシーは、思わずモジモジしながら目をそらし、恥ずかしそう
♢ルーシー、ジェレミー、フィオの連携討伐 森の奥深く、ルーシー、ジェレミー、そしてフィオの3人は順調に討伐を進めていた。魔物の群れが周囲に潜む中、剣士二人が前線で連携を取り合い、後方のフィオが魔術で支援をすることで見事なチームプレイを展開している。初めての連携にもかかわらず、その動きは手慣れているようで、見ている者には何度も共に戦ってきた仲間のように映った。 ルーシーは素早い身のこなしで魔物の攻撃をかわし、隙を見つけて剣を振り抜く。その剣は一閃で魔物の弱点を捉え、鮮やかに斬り裂いた。彼女はその動きの間もジェレミーの動きを観察し、互いにカバーし合う形で攻撃の隙を補っていた。 ジェレミーはしっかりと剣を構え、魔物の攻撃を受け止めるたびに力強く押し返す。その一撃一撃は訓練を重ねた結果であり、剣の軌跡は鮮やかで正確だ。魔物に囲まれた場面でも冷静に足場を確保し、ルーシーが動けるスペースを作り出していた。 後方のフィオは、魔物の動きを見極めながら身体強化の魔法を唱える。ルーシーとジェレミーの剣が力強く鋭さを増すのは彼女の支援があってこそだった。さらに、彼女は魔物の足元に氷の魔法を放ち、足止めをすることで剣士たちが安全に攻撃を仕掛けられる状況を作り出していた。「ジェレミー! 次、右側の魔物を頼むわ!」 ルーシーが剣を振り抜きながら声を掛ける。「了解です。私が押さえますので、その間に仕留めてください!」 ジェレミーはすぐに魔物の前に立ちはだかり、剣を構えた。 フィオはその様子を見ながら笑顔で声を掛ける。「ふたりとも、強化魔法をかけるよ! これで攻撃がもっと効くはず!」 ルーシーが笑いながら応じた。「頼りにしてるわよ、フィオ!」 ジェレミーも魔物を押さえ込みながら笑顔を浮かべて応じる。「感謝します、フィオさん。これで勝てますね!」♢遠吠えとレティアへの信頼 森の空気が静けさを取り戻し始めたその矢先、遠くの方から響き渡る魔物の雄叫びが聞こえた。それはまるで戦いが始まる合図のようであり、一行の注意を引き付けた。その音を
フィオもその言葉に続けて、レティアの提案に乗るように明るく答えた。「うん。それでいいよ。久しぶりの魔法を頑張っちゃおーっと! フルーツタルトのためね♪」 その無邪気な言葉に、フィオがだんだんとレティアに似てきている様子が伺えた。 ジェレミーは控えめに言葉を紡ぎながらも、目にはすでにやる気が燃え上がっているのが見えた。「それは助かりますね。復帰後の第一戦目ですし……ご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします。」♢討伐開始とルーシー、フィオの目標「さっ。始めるよぅ〜♪」 その声と同時にレティアの姿がスッと消えたかと思うと、『ドサッ!……ドサッ!』という重量のあるものが地面に倒れる音が森全体に響き渡る。音の正体は討伐された魔物だった。 一方、その勢いに触発されたルーシーも剣を構えながら、二人に声をかけた。「……れ、レティーに負けてられないわね。行くわよ!」 彼女の顔には闘志が宿り、その言葉には仲間たちを奮い立たせようとする力が感じられた。 そんなルーシーの姿を見て、フィオは少し微笑みながら問いかけた。「ルーシーは、何か食べたいものあるの?」 ルーシーはふと考え込み、少し照れたような笑顔を浮かべて答えた。「ぱ、パフェとか食べてみたいかなぁ……ケーキも食べてみたいし……まっ、無理しない程度に頑張ろ。」 彼女もまた、完全にレティアのペースに乗せられている様子だった。♢レティアの進化する討伐スタイル その頃、レティアは体を動かすために虹色の能力でラクに魔物を倒すのではなく、自分で虹色の能力を活かして剣を作り出して戦いに挑んでいた。「るんっ♪ るーんっ♪ みーつけたぁ♪ えいっ♪ とぉーうっ!」 彼女の軽快な声が響く中、手元に輝く虹色の剣が魔物を次々と切り裂いていく。剣が振られるたびに空中に鮮やかな光
フィオが恐る恐る呟く。その視線はノクスの銀色に輝く瞳と鋭利な牙に向けられていた。彼女の背筋には冷たい汗が流れている。 一方のジェレミーも微笑みを浮かべる余裕などなく、強張った表情で呟いた。彼の声は震え、その驚きを隠しきれない。「信じられません……このような存在が懐いているとは……。」 ルーシーは怯えるフィオとジェレミーに目をやり、軽く肩をすくめながら苦笑いを浮かべた。「慣れればかわいいと思えるかもよ。ほら、レティーはあんなに余裕で接してるでしょ? まあ……わたしにはムリだけどね。あはは……。」 その軽妙な言葉が少し場の空気を和らげるように響いたが、ノクスとシャドウパピーズの圧倒的な存在感は、まだフィオとジェレミーの背筋を硬直させたままだった。だが、その緊張の中でもレティアは天真爛漫な笑顔を浮かべ、ノクスの巨大な頭を何のためらいもなく撫でていた。 怯えるフィオとジェレミーを横目に、ルーシーは再び苦笑いしながら呟いた。「ほんと、レティーって……すごい子よね。」♢受け入れの兆しと獲物への不満 こうして少しずつ場が落ち着き始める中、レティアの柔らかい態度が仲間たちの緊張を解きほぐしていくように見えた。森の木々の間を吹き抜ける風が、彼らの頬を優しく撫でる。 ジェレミーはノクスとシャドウパピーズの圧倒的な威圧感に圧倒されながらも、なんとか気持ちを奮い立たせるように自分自身に言い聞かせるような声で呟いた。彼の声はまだかすかに震えているが、その中には前向きな姿勢が感じられる。「ま、まあ……仲間ということであれば……心強いですかね。」 その言葉には怯えが滲んでいたものの、彼自身の中で必死にポジティブな面を探そうとしている様子が感じられる。彼の表情には、葛藤と、そしてわずかな希望が浮かんでいた。 続けて、フィオもジェレミーの言葉に共感するかのように頷きながら震える声で答
その間もレティアはニコニコと笑顔を浮かべ、まるで自分の力をひけらかすこともなく当たり前のように話していた。だが、その使役獣たちがすでに討伐を進めているという状況に、フィオは少し唖然とした様子でため息を漏らした。「もう……ほんとレティーちゃんって……いろんな意味で手に負えないわね♪」「さすが、全職業の適性をもっているレティア様らしいですね。」 嬉しそうに呟くジェレミー。彼の声には、レティアへの尊敬がにじみ出ていた。♢ノクスとシャドウパピーズ、影からの出現「そっかぁ。ジェレミーに紹介してないよね。ノクス、シャドウパピーズきてー。」 レティアが親しげな声で語りかけたその瞬間、彼女の影が揺れ動き始めた。影が膨らみ、そこから次々と飛び出してくる巨大な狼型の魔物と狼の最強種の群れ。その異様な光景に周囲の空気が一変した。森の鳥たちのさえずりが止み、静寂が訪れる。 最初に姿を現したのは、漆黒の毛並みに紫の模様を纏ったノクス。その巨大な体は地面に影を落とし、一帯に圧倒的な威圧感をもたらした。その毛並みは夜闇に溶け込むかのように深く、紫の模様が妖しく輝いている。銀色に輝く瞳が一行を鋭く射抜き、どんな隠れた敵も見逃さないという冷酷な輝きを宿していた。 剣のように鋭い牙が、わずかに覗き、その口元から漏れる低い唸り声は森全体に響き渡る。足元からは瘴気が揺らめきながら漂い、その触れた枝葉は瞬く間に枯れ果て、まるで生命そのものを奪われたかのようだった。枯れた葉が、カサカサと音を立てて地面に落ちる。 続いて現れたのは――ノクスが従えるシャドウパピーズの群れ。狼種の中でも最強とされるその存在は、ただ佇むだけで周囲に圧倒的な恐怖を植え付ける。彼らの存在が、森の空気を重くする。 金色の瞳が暗闇の中で鋭い光を放ち、獲物を捉える目つきには、容赦なき狩人の執念が宿る。漆黒の毛並みに包まれたその巨大な体は、大型犬すらはるかに凌駕し、一群となって動くたびに周囲の空気を震わせた。地面が、彼らの足音で微かに揺れる。 牙と爪の鋭さは、見る者に本能的な恐怖を刻み込む。唸り声